この恋が運命じゃなくても、きみじゃなきゃダメだった。



陸はよく誘ってくれるようになって、何度かふたりで遊んだ。

十二月の半ばには、合コン(?)の時のメンバーで忘年会が開催された。前回と同じくカフェに集合してからカラオケへ行った。

「お前歌わないの?」

隣に座っている陸が、デンモクをあたしの膝に置いた。

「……ちょっと眠くなってきた」

時刻は二十三時。今日は金曜日だから学校があったし、あたしはわりと早寝だからいつもなら布団に入っている時間だ。

それに男性陣は煙草を吸うから、部屋に充満している煙は睡魔に支配されかけている体に少し堪える。

「んー……ちょっと外出ようかな」

デンモクを置いて、スマホを持って煙たい部屋を出た。

建物内に休憩できるような場所がなかったから、外に出て非常階段に座る。危ないからとついて来てくれた陸があたしの隣に座った。

「ちょっと気になってたんだけど……ずっとスマホ鳴ってない?」

音は出してないみたいだけど、ポケットの中でブーブー鳴っている。

「ああ、元カノ」

あっさり答えて煙草をくわえる。

せっかく煙草の煙から逃げてきたのに、と文句を言おうかと思ったけれど、風向きのおかげであたしのほうに煙がこないから許すことにした。

「出なくていいの? すごい鳴ってるし、急用とかじゃ……」

「ちげーよ。ヨリ戻したいって、たまに鬼電くる」

「え」

「頭おかしいんだよ。付き合ってる時も毎日のように大喧嘩してたし、別れるって言うとヒステリー起こして泣きじゃくって暴れるし、別れるなら死ぬ! って。まあ本当に死ぬわけねえのはわかってたけど」

「え……」

衝撃的な話に驚きを隠せなかった。ドラマでそういうのを観たことはあるものの、現実世界でそんな話を聞いたのは初めてだ。

おかげさまで限界に達しかけていた睡魔が吹っ飛び、このままオールできそうなくらい完全に覚醒した。

「んなあからさまに引くなよ」

引くよ。悪いけどドン引きだよ。