この恋が運命じゃなくても、きみじゃなきゃダメだった。




土曜日、仕事だったらしい陸が迎えに来たのは夕方だった。

あたしの家付近にはこれといって目印がないから駅で待ち合わせをした。シルバーの乗用車を窓から覗くと、あたしに気づいた陸は中から助手席のドアを開けてくれた。

「おう。久しぶり」

「うん。久しぶり」

助手席に乗ってドアを閉める。陸はくわえていた煙草をドリンクホルダーに置いてある灰皿に差した。

「じゃあ行くか」

「うん」

車が発進する。行き先は聞いていないから知らない。

「お前いくつだっけ? 高三?」

「そうだよ」

「じゃあ十八か」

「早生まれだからまだ十七」

「わっか。いいねえ」

青春真っただ中だな、と笑った。

「陸は二十二歳だよね?」

「そうだよ。年金払ってるかられっきとした大人だよ」

大人の基準が年金って。ちょっと可笑しくてつい笑うと、陸も「笑いのツボ浅くね?」と笑った。

一度しか会ったことがない人の車に乗るのは正直少し抵抗があったけれど、陸がいろんな話を振ってくれるおかげで徐々に緊張が解けていく。

軽くご飯を済ませてから向かった場所は海だった。真っ白な海。

「なんで冬に海?」

「海が見たかったから? 特に行きたいとこもなかったし、ドライブといえば海だろ」

冬の海なんて初めてだ。

すでに暗くなっていてよく見えないけれど、窓を閉めていてもさざ波の音がかすかに聞こえてきて、なんとなく落ち着く。