「弟ふたりいるから、男に対しては姉御肌なのかも。男の前だとなんか強気で偉そうになっちゃうんだよね」
瑞穂は背も高いし、性格もサバサバしているし、確かに〝お姉ちゃん〟って感じだ。
部活でもキャプテンだったし、みんなをまとめている姿が容易に想像できる。
「乃愛は? 準くん」
「遊ぼうって誘われてるよ」
「会うの?」
「とりあえず会う約束はしたけど、付き合うかはわかんないかな。チナは? 陸くんと遊ぶの土曜だっけ?」
「え?」
瑞穂と梓が同時に声を上げた。
「え? チナ、陸くんと会うの? ふたりで⁉」
「言ってなかったっけ?」
「ちょ、聞いてないよ! どーゆうこと⁉」
てっきり報告したものだと思っていたけれど、すっかり忘れていたらしい。
「なんで⁉ いつの間に⁉」
「あ、えと、こないだ解散したあとに電話きて」
事のいきさつを説明する。
と言っても、電話がきて誘われたから土曜日に遊ぶってだけなんだけど。
「いいなー。陸くんかっこよかったよね」
瑞穂が両手で顔を覆い、もう一度「いいなあ」と繰り返した。
「かっこいい?」
「かっこいいじゃん。背高いしスタイルいいし、クールっぽかったし」
そうか、陸はかっこいいのか。
たぶんあたしは典型的な『好きになった人がタイプ』というやつで、初対面で男の人をかっこいいと思うことが未だになかった。