あたしの返事を待たずに「決まりな」と付け足した。考えるまでもなくどうやら決定事項になったらしい。
また連絡する、と少し一方的に切れた電話。わけがわからないまま画面を閉じてポケットにしまうと、乃愛は予想通りにやにやしている。
「……なんか遊ぶことになった」
聞こえてただろうけど一応報告すると、乃愛は「よかったね」と今日一番の満点スマイルをあたしに向けた。
よかった……のかな。よくわからない。
「なんでだろ。陸さんと全然しゃべってなかったのに」
当然の疑問を口にしただけなのに、乃愛は長い長いため息をついた。
「チナさー。いい加減ほんと自覚しなよ」
「え?」
「チナは可愛いの! すっごい可愛いの! 可愛いし印象がよかったから誘われたんでしょ。それだけの話だよ」
「……そう、かなあ」
「そう。チナはいちいち深く考えすぎだよ」
あたしのどこが可愛いのか全然わからない。
だけど思い返してみればいつもそうだった。知り合って、我ながら可愛いげがないのになぜか気に入ってくれて、好きになってくれる。
愛される才能がある──悠聖がそう言ってくれたことを思い出す。
そんな才能があたしにあるなんて、やっぱり到底思えないけれど。
「せっかくだし楽しんできなよ」
「うん……」
「どうしたの? 嫌なの?」
「あ、ううん。嫌じゃないけど……」
もし乃愛の言う通り私のことを気に入ってくれたなら嬉しい。
だけどいいのかな。
本当に好意を持って誘ってくれたなら、こんな中途半端な気持ちのままふたりきりで会うのってどうなんだろう。それってすごく失礼な気がする。