一緒に帰る予定の乃愛とふたりで友哉のあとを追う。中庭が見えてくると、そこにはしゃがみ込む椎名の後ろ姿があった。
ちょっとだけドキドキする。なんか変な感じだ。
「ほら椎名、さっさと謝れよ、チナ怒ってないみたいだから」
友哉が椎名の背中をぽんと軽く叩くと、椎名はやっぱりだるそうに、もはや酔拳でも繰り出しそうな身のこなしでゆらりと立ち上がった。
「あの……ごめんなさい。怒ってないから。ただの八つ当たりで……ちょっとイライラしてて……と、とにかく、……ごめんね」
少し緊張しながら先に謝る。
八つ当たりしちゃったのはあたしなのだから、どう考えてもあたしが悪い。
「いや、俺もごめん。あんな怒ると思わなくて」
「ほんとにただの八つ当たりだったの。だからもう気にしないで。ほんとにごめんなさい」
あっさり仲直り(?)をして、友哉がもう帰ろうとみんなを誘導した時。
「あのさ、言い方変だったせいで誤解させちゃたわけだから、一応ちゃんと訂正しときたいんだけど」
「え? なに?」
椎名の思いがけないひと言に、あたしたち三人は唖然として硬直することしかできなかった。
「彼氏いなかったらよかったのに、って思っただけだから」
そう言った椎名は、やっぱり無表情で、なにを考えているのかまったくわからない。