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恋によって負った傷は恋でしか治せないと聞いたことがある。
別にそんなことはないと思うし、自然治癒の可能性だって大いにあるはずだ。
いや、そもそもあたしは傷を負ったわけではない。ついでに言わせてもらえば、新しい恋をしたいわけでもない。
だから今日ここへ来たのは、新しい恋を探すためではなく、絶賛彼氏大募集中の乃愛と瑞穂のため。
それだけだ。
「ヤバイ、大学生と遊ぶなんて緊張するー!」
「瑞穂、さっきからそればっか」
人生初の合コン(?)開始三十分前、あたしたち三人は会場である高校の近くのカフェに向かっていた。
乃愛から誘いを受けたのは今から二週間前、十月の半ばだった。
七月に来ていた教育実習生に、お互い友達を誘ってみんなで遊ばないかと誘われたらしい。といってもあたしのクラスには来なかったのだけど。
実習最終日に連絡先を訊かれて交換して、たまに連絡を取っていたと聞いた。
梓は友哉がいるからもちろん欠席。あたしは相変わらず人見知りだしそういうのは大の苦手だから何度も断っていた。
だったらなぜ今ここにいるのかというと、向こうが三人だからどうしてもと乃愛に説得された(強制的にイエスと言わされた)からである。
「準くん、久しぶり」
「おー、久しぶりって! って、遊んでくれなかったの乃愛ちゃんだろ」
準くんと呼ばれたその人は嬉しそうに微笑んだ。例の実習生で、乃愛の次の彼氏候補(だとあたしが勝手に思っている人)だ。
彼の横に並んで座っている男の人たちも次々と頭を下げる。
「みんなも来てくれてありがとう! ……って言っても、俺のこと知らないよね?」