あたしたちもとうとう三年生になった。

制服を着られるのも、みんなとこうして過ごすのも、あと一年しかないのだと思うと少し寂しくなる。

「今年も無事にみんな進級できたね」

購買のパンを手に、瑞穂が嬉しそうに言った。

知り合ってから丸二年が経ったけれど、瑞穂が昼休みにパン以外を食べているところはあまり見たことがない。

特に焼きそばパンが大のお気に入りで、毎日食べても飽きないらしい。

「無事にって、危なかったの瑞穂だけでしょ」

毎日欠かさず手作りのお弁当を持ってきている梓が、隣でにこにこしている瑞穂に呆れた目を向ける。

入学したばかりの頃、勉強は苦手だと言っていた瑞穂は、宣言通りテスト前ですらあまり勉強をしていない。

まああたしと乃愛も勉強するのはテスト前くらいだし、偉そうなことは言えないのだけど。

見兼ねたとういうか呆れた梓が無理やり勉強を教えた結果、みんな三年生に進級できたのだった。

「テスト前は部活も休みだったのに、なんで勉強しないの?」

「だって遊びたくなるんだもん」

冷たい目をした梓が、はあー、と盛大にため息をついた。

最後の体育祭が終わり、最後の学校祭も終わっていく。着実に、確実に、卒業に近づいていく。

あたしは幼稚園教諭になるという夢があるから、中三の頃みたいに進路に悩むことはなかった。

問題なく推薦をもらえると先生にも言われたし、あとは成績をキープしながら問題を起こさないよう過ごすことを心掛けていた。

その甲斐あって、秋になると無事に推薦をもらえた。

乃愛は美容専門学校を受験する。友哉は地元の会社に見事内定。

梓は一年生の頃から志望していた国立大学へ。瑞穂は付属の大学に進学すると言っていたけれど、(鬼監督梓のおかげで)驚異的なスピードで成績がぐんぐん伸びていき、もう少し上のランクに挑戦してみたいと言って外部の大学を受験することにした。

ふたりはまだまだ受験中だけど、みんな少しずつ、確実に未来に向かっている。

志望校が決まらず悩んでいた中三の頃。あの頃に描いていた未来図とは全然違う。

あたしは変わったんだろうか。少しは成長できているんだろうか。

これからはどう変わっていくんだろう。あれから三年経った今も、未来はまだよく見えない。