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椎名に「ふたりで会いたい」と言われたのは数日後だった。
高校の近くで待ち合わせをして、一緒に電車に乗る。地元の駅に着くと、前みたいに椎名のママチャリでふたり乗りをして、溜まり場の公園に向かった。
「あのさ。気づいてると思うから単刀直入に言っていい?」
ベンチに並んで座るとすぐに椎名が切り出す。
椎名の言う通り気づいているあたしは小さく頷いた。
「俺、やっぱりチナといると楽しい。チナが好きです。だから……もう一度、俺と付き合ってください」
今日は前髪をいじらずに、まっすぐにあたしの目を見て言った。
次に会ったら言われるかもしれないと思っていた。だから、あの日からずっと考えていた。
その目をそらさずに、考えていた答えを口にする。
「……ごめんなさい」
椎名と久しぶりに会って、懐かしくて、すごく楽しかった。あの頃よりもずっと明るくて、優しくて、あたしなんかに「ありがとう」と言ってくれた椎名。
別れた時、忘れられなかった時、早百合ちゃんと楽しそうに笑い合っている姿を見ていた時。
椎名とまた笑い合える日がくるなんて、椎名にまた好きだと言ってもらえる日がくるなんて、夢にも思っていなかった。
「そっか」
「……ごめんね」
先に目をそらしたのはあたし。膝の上でぎゅっと手を握ってうつむいた。
「彼氏はいないんだよな?」
「あ、うん」
「じゃあ……こないだの男のこと好きなの? カラオケで一緒にいた超イケメン」
首を横に振る。
「……元彼が忘れられないの」
忘れられない。