「チナ! どーゆうこと⁉」

翌日、乃愛は借金の取り立てかってくらいの勢いであたしの部屋に乗り込んできた。

どうしても起きる気になれなくて、昼過ぎまでベッドでうなだれていたあたしの前で、キャラメル色の髪が揺れる。

巻き髪は乃愛のポリシーなのに、今日はストレートだった。よほど慌てて来たのだということがわかる。

どーゆうこと、と言われても、特になにもなかったのだけど。

「カラオケで偶然会ってね、宗司くんが持ってたコーラがあたしの制服にかかって」

「それは宗司くんが言ってたからわかってる!」

「染みになっちゃうからうちおいでって言われたの。宗司くんのおうち、あのカラオケのすぐ近くだったから」

「それもわかってるけど……健吾の家もあの近くだし。てかあたしが知りたいのはそういうことじゃなくて!」

だるい体を起こして布団から出る。ずっと寝ていたせいでぼさぼさになったあたしの髪を、乃愛はネイルが施されている指先でとかした。

「制服洗濯してくれただけだよ」

乃愛が知りたいことはちゃんとわかってる。あたしがちゃんと答えると、乃愛は少し安心したように見えた。

「……乃愛」

「なに?」

「あのね、学校祭の日、宗司くんに告白? されたの」

「え?」

「本気かわかんないけど……たぶん嘘だと思うけど」

そう、絶対に嘘なはずだった。本気なわけがないはずだった。だからこそわざわざ乃愛に報告するまでもないと思っていた。

だけど昨日の宗司くんを思い返すと、百パーセント嘘ではないのかもしれないと自惚れてしまっている自分がいた。

だから聞いてほしくなったのだと思う。