右手に持っていたコーラのキャップを開けて、二・三口飲んだ。

そういえば宗司くん、さっきもコーラ持ってたっけ。好きなのかな。

悠聖も好きだったな、コーラ。

「制服乾くまでゆっくりしていって」

ペットボトルの蓋を閉めてテーブルに置く。あたしの前にあるテーブルに右手で置いたから、少し、肩が触れた。

「……うん。ありがとう」

あたしもオレンジジュースの蓋を開けてひと口飲む。果汁一〇〇%だから、ちょっと苦い。

「チナちゃんさ」

「なに?」

「なにも考えないでついてきた?」

宗司くんは意地悪だ。

強引に連れてきたのは自分なのに。

「……意味わかんない」

「わかんないほどバカじゃないでしょ、チナちゃんは」

言い返せないのは、イエスと答えたらバカにも程があると思ったから。

思考回路がまわりきっていなかったのもあるとはいえ、それ以前にあたしは油断しきっていた。

この人が正真正銘のチャラ男なのだということをすっかり忘れていた。

「遊びで手は出せないけど、俺チナちゃんとまた付き合いたいって前に言ったよね」

──違う。そうじゃない。

油断していた理由はそんなことじゃない。

あたしには手を出さないだろうって、出せないだろうって、少なからずそんな考えがあった。

今のあたしたちの間には「悠聖」がいると、「悠聖」という盾があると──無意識に思っていたからだ。

いつまで悠聖の存在にしがみつくつもりなんだろう。悠聖はもういないのに。あたしたちはとっくに別れたのに。

宗司くんにとって今のあたしは、先輩の彼女じゃない。単なる同期生でしかないのだ。

あたしには手を出せないなんて、そんなの自惚れでしかない。