夏休みが明けても、毎日のようにみんなで遊ぶ日々が続いていた。
そのおかげで気が紛れているのか、少しずつ笑顔を取り戻してきているような気がする。
今日はいつも行っている駅前のカラオケが満室で入れず、自転車で隣町の──悠聖の家の近くのカラオケに行くことになった。
トイレへ行こうと部屋を出て廊下を歩いている途中、ドアが突然開いた。
「あれ? チナちゃん?」
そこから出てきたのは、あたしと同じく制服姿の宗司くんだった。
「偶然だね」
ドアを閉めてにっこり笑う。
どうしてここにいるのかと一瞬焦ったけれど、そういえばこのカラオケは宗司くんと初めて会ったカラオケだ。あたしの中ではもう「悠聖の家の近くのカラオケ」になっていただけ。
あたしの頭の中はいつまで悠聖だらけなんだろう。
「ここにいるの珍しいね。チナちゃんの家からなら駅前のほうがよっぽど近いんじゃない?」
「行ったんだけど、満室だったから」
「そっか。友達と来てるの?」
「うん。宗司くんも?」
「中学の時の奴らとね。今ジュース注ぎに行くとこ」
宗司くんの手にはプラスチックのコップ。このカラオケはドリンクバー制だ。
「注ぎに行くって、まだ入ってるじゃん」
「違うの飲みたくなってさ。これは捨てる」
「それダメじゃ──」
言いかけた時、宗司くんの後ろにある、ついさっき宗司くんが出てきたドアが勢いよく開いた。宗司くんの背中に思いっきりあたり、バランスを崩した宗司くんがあたしに覆いかぶさる。
なんとか持ちこたえて倒れはしなかったものの、宗司くんの手にあったコップがあたしの胸元にぶつかった。
「ああーっ‼」