久しぶりに会って、気まずさやわだかまりがなかったわけじゃなかった。

椎名も後悔していたから、気を使ってくれていただけだった。あたしはなんて能天気なんだろう。

初恋を思い浮かべて一番に思い出すのは別れた日のこと。

終わり良ければすべて良しと言うけれど、終わりが悪ければすべて悪く思えてしまうのかもしれない。

実際にあたしは、楽しかったことも幸せを感じたこともたくさんあったはずなのに、それよりも話さなくなってからの記憶のほうが強く残っていた。

「でもさ、楽しかったよな! 中二の頃」

「あ、うん! すっごい楽しかった!」

あの頃こうして素直に話せたら、今はどうなっていたんだろうと考えてしまう。

だけどきっと、時間が経った今だからこそ話せることで、離れていたからこそわかることもあるんじゃないかと思った。

「話せてよかった。ありがとな」

「あたしのほうこそ、ありがとう」

椎名は優しく微笑んだ。

あたしの頭は本当に都合よくできているらしい。

後悔ばかりだった初恋が、幸せだった記憶に変わった気がした。