正直あまり思い出したくないことではある。今せっかく普通に話せているから余計に。
「あの時は正直ふざけんなって思ってたし、チナたちのことばっか責めてたけど」
そう思うのは当たり前だ。あたしは椎名に嘘をついて、ずっと隠していたのだから。
当時は辛くて悲しくて仕方なかったけれど、椎名が怒るのは当たり前だった。
「でも今思えば、言えなくて当然だったんだよな。俺のこと考えて隠してくれてたのかなって思ってさ」
そんなことない。あたしはあたしの都合で隠していた。椎名に嫌われたくない一心で、自分のことしか考えていなかった。
「……今さら遅いのはわかってるんだけどさ。あの時もっとちゃんと話聞けばよかったって後悔したことあったんだよな。……ほんと、ごめん」
優しいところは変わっていない。
あの頃はあたしの気持ちに気づいてくれないところがもどかしかったけれど、素直に言えば考えてくれたし、ちゃんと椎名なりに応えてくれた。
「……椎名は悪くないよ。あたしが悪かったの」
「俺、どっちかが全部悪いことってないんじゃないかと思うんだよね」
話している間ずっと前髪をいじっていた椎名は、その手をおろしてあたしに顔を向ける。
「なんか……俺が言うなよって感じだけど、すっきりしない別れ方だったしさ。そういうのってずっと残るもんなんだな」
あたし、本当に情けない。
傷ついたほうの椎名がこんなに考えてくれていたのに、あたしは思い出さないようにしていたんだから。後悔ばかりの初恋は苦い思い出だったから。


