この恋が運命じゃなくても、きみじゃなきゃダメだった。



「正直さ。転校なんか初めてだったし、俺友哉みたいに社交的じゃないし、友達できるかって不安だったんだけど、すぐ友哉たちと仲良くなれて、二年になったらチナと同じクラスになって、チナのこと好きになって、初めて女の子と付き合って。俺すげー楽しかった」

前に友哉が、椎名は転校してきた時すごく暗い子だったと言っていた。二年生で同じクラスになった時も同じ印象を受けた。

今考えれば、そんなの当たり前だ。

幸いあたしは転校したことがないから、椎名の気持ちはきっとちゃんとはわからない。

だけどあたしなんか新学期でさえ不安になるのに、転校なんてもっともっと不安だったはずだ。

「なんか、こういう風に言ったら『じゃあ早百合は?』って思うかもしんないけど、なんていうか……そうじゃなくて」

「うん、わかってるよ」

そう言うと、椎名はほっとしたように小さく微笑んで続けた。

「あの頃はほんとなんにも考えてなくて……純粋に、とにかく楽しかった」

あたしもそうかもしれない。初恋が実って、信頼できる友達がいて、なにも考えず純粋に毎日を楽しめていた。

それなりに悩みもあったけれど、今思えば幸せな悩みばかりだった気がする。

「あの頃、母親の浮気で離婚して、急に親父とふたりっきりになって。親の離婚って思ってたよりダメージでかくてさ。けっこう辛くていろいろ悩んでたんだけど……でもチナたちのおかげですげー楽しかったんだよ」

友哉から聞いた椎名の話を思い出す。離婚が原因で椎名は女の子が苦手になったと言っていた。

お母さんの浮気、だったんだ。

「だから……ありがとう」

椎名が悩んでいたことなんてなにも知らなかった。

あたしは自分のことで精一杯で、ありがとうなんて言ってもらえるようなことはなにひとつしていないのに。

「……あと、別れた時のことも、ちゃんと謝りたかったんだ」

どくん、と心臓が小さく跳ねた。