この恋が運命じゃなくても、きみじゃなきゃダメだった。



どうしてわざわざこのタイミングで切り出すんだろう。痛いところを突いておいて、宗司くんは前を向いたまま涼しい顔をしている。

「……別れたよ」

別に隠すことじゃない。それにあたしがここで泣いているだけで大方予想がつくと思うし。

「そっか」

そう、隠すことじゃない。

それなのに――どうしてだろう。

どうして「別れた」と口にしただけで、こんなにも胸が痛くなるんだろう。

「悠聖くん東京だっけ? 連絡も取ってないの?」

「……取ってないよ」

「そっか。さっきなんで泣いてたの?」

ズケズケと訊いてこないでほしい。この人にはデリカシーというものが……ないか。

「泣いてないよ。目にゴミ入っただけ」

なんとなく癪で、強がりにさえならない、もはや古典的なギャグみたいな嘘をつく。

夏の穏やかな風はあたしの強がりを流してはくれなくて、宗司くんはそれを見透かすように小さく笑った。

ちょっと悔しいし、ほんとムカつく。

「チナちゃんさ、モテてるでしょ」

「え?」

「よく噂で聞くよ。誰かがチナちゃんに告ったとか、誰かが乃愛ちゃんに振られたとか。ふたりの人気は衰えてないからね」

モテてる……かはわからないけれど、悠聖が卒業してから何人かに告白されたりもした。

「別にモテてないよ」

誰に告白されたって嬉しくもなんともない。心が動くことはないし、その場ですぐに断っていた。

だって、悠聖じゃない。あたしが好きだと言ってほしいのは、今でも悠聖だけなのに。

「そっか。彼氏つくる気ないの?」

「ないよ。別に彼氏なんていらない」

そう、彼氏なんていらない。必要ない。あたしが求めているのは悠聖だけ。

「チナちゃんさ」