悠聖のことばかり思い出して――余計に苦しくなるだけじゃん……。

景色を堪能する条件は揃いすぎているほど揃っている。なにも考えずに見るのなら、間違いなく今までで一番綺麗な景色だ。

それなのに、どうしてだろう。どうして、全ての色がどこかくすんで見えるんだろう。視界にフォーカスがかかっているみたいだ。

この四ヶ月、悠聖からの連絡は一度もない。

ゴールデンウィークは帰ってきたのかな。お盆には帰ってくるのかな。最初は精神的にも金銭的にも余裕がないだろうから帰ってこられないと思うって言ってたっけ。

もし帰ってきたとしても――あたしには連絡はこない気がする。なんとなく、そんな気がする。

元気かな。風邪ひいてないかな。仕事は大変だろうけど、無理してないかな。

……もしかしたら、もう新しい出会いがあったかもしれない。

悠聖。たまにはあたしのこと思い出してくれたりするのかな。

あたしは――まだ悠聖のこと、全然忘れられそうにないよ……。

「あ、先客……って、ごめん」

ドアが開いた音に驚いて弾かれたように振り返ると、あたしの顔を見たその人は気まずそうに目をそらした。

悠聖以外にも――屋上に入る方法を知ってる人がいたんだ。

どうしてよりによって今なんだろう。

――どうして。悠聖のことを考えて泣いている時に来るんだろう。

「……ごめんなさい」

だから来られなかったんだ。だから来たくなかったんだ。

ここに来たら、悠聖と見た景色を見たら。気持ちが溢れて、涙を堪えきれなくなると思ったから。

……でも。それでも。

どうしても、この景色を見たくなってしまう。

悠聖が三年間見ていた景色を。