今年も学校祭が始まる。

昇降口から正門までの道を囲うようにずらりと並んでいる出店。浴衣や甚平に身を包んだ生徒たち。

あたしたちのクラスは教室を利用して出し物をすることになった。

去年はぎりぎりまでドレスを作ったりステージに上がったりと忙しかったけれど、今年はなにもしないから暇をもて余すばかり。

朝から浴衣を着て、目的もなく出店の周りをうろうろしていた。

「このあとどうする?」

フランクフルトを頬張りながら瑞穂が言う。

「うーん。どうしようね。もうお腹いっぱいだし」

梓が答えを求めるように乃愛を見る。

「そういえば友哉のクラスお化け屋敷でしょ? 行ってみようよ」

乃愛が梓の浴衣を袖を引くと、赤地に小さな白い花が散りばめられている浴衣に身を包んだ梓が、照れくさそうにうなずいた。

わいわいと三人で話している姿を、どこか遠い気持ちで眺める。

どうしても――気が晴れなかった。

「チナも行くでしょ?」

突然話を振られたあたしは、はっとして瞬時に笑みを作った。

「あたしはいいや。お化け屋敷苦手だし」

テレビや映画でホラー系を観るのは嫌いじゃないけれど、お化け屋敷みたいに驚かされたりするのはどうも苦手。まあテレビや映画も決して得意ではないけれど。

「あたしちょっと行きたいところあるから三人で行ってきなよ。もうすぐ友哉上がりでしょ?」

「うん。お化け屋敷入って、出てきたらちょうどいい時間だと思う」

友哉は午前中だけ勧誘係だから、それが終わったら梓と一緒に校内をまわると聞いていた。