「そう。女もいるんでしょって。学校で女と話してるんじゃないかとかしょっちゅう言われて、どんどん喧嘩増えていった」
嫉妬する早百合ちゃんはなんとなく想像がつく。
それにあたしもその気持ちはわからないでもない。椎名は女の子が苦手だと知っているからこそ、逆に不安になってしまうのだと思う。
もしも仲のいい女の子ができたら。もしもその子に心を開いてしまったら。
中学の頃はずっと一緒だったのに突然離れてしまったから、不安に押しつぶされそうになってしまったのだと思う。
あたしも椎名が女の子と話すようになった時は気が気じゃなかった。その嫉妬が大きくなると、早百合ちゃんみたいに止まらなくなってしまうものなんだろうか。
五分ほど自転車をこいで、あっという間にあたしの家の前に着いた。荷台からおりて「じゃあ」と言いかけた時、椎名が振り向いて鞄からスマホを出した。
「チナ、よかったらLINE交換しない?」
「あ、うん。でもあたし、椎名のLINE知ってるよ? 消したりしてないし」
「あー……ごめん。俺チナの……っていうか、女子全員消したんだよ。アカウントも変わってる」
気まずそうに言う椎名に、早百合ちゃんとの関係をなんとか保つためにそうしたんじゃないかと思った。
基本的に無表情でなにを考えているかわからなかったけれど、椎名はいつも優しかったから。
「そっか。じゃあ交換しよ」
お互いスマホを取り出して、今のIDを交換した。
「久しぶりに話せてよかったよ。今度遊ぼうな」
「うん! 遊ぼう」
スマホをポケットにしまい、手を振って椎名を見送った。
なんだか不思議な気持ちだった。別れてから話していなかった椎名とこんなに普通に話せるなんて。
話しているうちに気まずさやわだかまりなんてすぐになくなっていた。
椎名の雰囲気のおかげだろうか。それとも、時間がそうさせたんだろうか。


