この恋が運命じゃなくても、きみじゃなきゃダメだった。



あたしたちの地元の駅名がアナウンスされて、話は一旦中断した。

一緒に電車をおりて改札をくぐる。外見はずいぶんと爽やかになったけれど、猫背なところと糸でつられているかのような歩き方は変わっていない。

椎名は駅まで自転車で来ているらしい。あたしは徒歩だからここでお別れかと思いきや、椎名が「別れる時ちょっと大変だったよ」と続けたから、流れで駐輪場までついて行った。

「なにが大変だったの?」

「別れたくないってすげえ泣かれてさ。一ヶ月くらいずっと話し合いしてた」

ということは、椎名から別れを切り出したんだ。

ふたりは本当に仲が良かった。中学生の頃、休み時間に廊下で話しているところや一緒に帰っているところをしょっちゅう見かけた。

椎名と別れた日、乃愛と言い合いをした時の早百合ちゃんは今でも鮮明に覚えている。

当時彼女だったあたしでさえ、本当に椎名のことが好きなんだとまるで他人事のように思ってしまうくらい真剣な目だった。

「あいつ女子高行ったんだけど、だからかな。けっこう束縛ひどくなってさ」

見つけた自転車に鍵を差しながら椎名が続ける。

「束縛?」

「うん。やっぱ自分の周りには男いないのに、俺の周りには女がいるわけじゃん」

駐輪場から出したママチャリの荷台を指さして、「乗ってく?」と首をかしげる。少し戸惑いながらも「うん」と頷いて素直にまたがると、初夏の優しい風がふわりと頬をなでた。

「俺は女苦手だから別に関わってなかったんだけど、友達と遊ぶっつっただけで喧嘩になるんだよ」

「ヤキモチで?」