――六月。

あたしたち四人は予定通り専攻科目をほとんど同じにして、進路調査も全員進学希望で提出した結果、狙い通り同じクラスになれた。

友哉も成績優秀の梓のおかげでなんとか進級。

けれど世の中はなにもかもがうまくいかないようにできているらしく、就職コースの(しかも実は理系のほうが得意だったらしい)友哉だけ違うクラスになってしまった。

まあ一緒に進級できただけでも褒めるべきだから、仕方ないねと笑った。

「チナ、ごめん! 今日彼氏と遊ぶ約束してたのすっかり忘れてて……」

宿題が出た科目の教科書を鞄にしまっていたあたしの眼前で、キャラメル色の巻き髪がふわりと揺れた。

一緒に帰る約束はしていたものの、特別なにかしたりどこかへ行く計画を立てていたわけじゃない。

それでも乃愛は本当に申し訳なさそうに目をぎゅっと閉じて、両手を顔の前で合わせた。

「いいよ。気にしないで。楽しんできてね」

「ほんとごめんね……」

あたしが「また明日」と手を振ると、乃愛は胸を撫でおろしたように小さく微笑んで「ありがとう、また明日ね」と言った。

乃愛が背中を向けて歩き出したのを確認して手をおろした時、乃愛がくるりと踵を返した。

「乃愛? どうしたの?」

二重の大きな目であたしを見据えた。

色素の薄い瞳が、迷っているように小さく揺れる。

「……チナ、無理しないでね」

眉尻を下げて、今度はあたしを安心させるために、どこかぎこちなく笑みを作った。

その言葉の意味はわかってる。たったひと言で乃愛の想いが伝わる。

あたし、全然隠せていないみたいだ。

「……大丈夫だよ。ごめんね。ありがとう」