ワイシャツのボタンを留めて、タータンチェックのスカートをはく。

着慣れた制服。入学した頃はワイシャツもリボンもブレザーも違和感だらけだったけれど、この一年で少しは着こなせるようになっただろうか。

一年生の頃と違うのは、胸元にはリボンではなくネクタイが巻かれていること。

悠聖がくれた、三年間の思い出とあたしへの想いが詰まったネクタイ。

使おうか悩んでいた。けれど眠らせるのは、もったいない気がして。

悠聖と別れてから三ヶ月。あたしの心は、あの日からずっと止まったままだった。

朝起きて制服を着て、乃愛と一緒に学校へ行く。学校へ行けば友哉や瑞穂や梓と話して、一日が過ぎていく。

変わらない日常。なにも、変わらないのに。

どうしてだろう。どうして悠聖だけいないんだろう。

悩んだ時は一番に相談したかった。楽しいことがあった時は一番に報告したかった。大人になっていく姿を、ずっと隣で見ていてほしかった。

悠聖が残してくれたものは、これから忘れなければいけないあたしにとっては多すぎる。

引き出しに眠らせた、修学旅行のお土産と誕生日にくれたペアリング。

卒業式の日にくれたボタン。

鞄に入っている財布。

机の上には、彼女になった日にくれた、桜の花束を胸に抱いた青いクマ。

クマの首もとには、〝Y〟の形をしたキーホルダーが光っている。

目が合ったクマは泣いている気がした。