友哉の周りはみんな派手で明るい子ばかりだから、彼――椎名くんみたいなタイプは初めてだった。

「そいつ椎名。仲良くしてやって」

「あたしは高橋(たかはし)乃愛で、こっちがチナね。高瀬(たかせ)千夏。よろしくね」

例によって、乃愛が自分とあたしを交互に指さしながら満点の笑顔で自己紹介をする。あたしも乃愛にならってぺこりと頭を下げた。

乃愛は超絶美少女だから、男の子はだいたいこの瞬間ノックアウトなのに、椎名くんは微塵も表情を動かすことなく、目を合わせることすらせずに「どうも」とだけ返してきた。

さすがの乃愛も少し驚いたのか、珍しく絶句している。

……なんかちょっと暗い子だな。

あたしは若干気まずくなったこの空気を和らげるためのフォローを入れるなんて高等技術は持ち合わせていない。

もう会話が続かないと判断して、彼に負けないくらい小さな声で「よろしく」とつぶやいて席に座った。

あたしの後ろに乃愛も座る。『高瀬』と『高橋』だから、あたしたちの席はいつも前後だ。

椎名くんは特に気にもしてない様子で、自分の席へと戻っていった。といっても友哉は『佐伯』で『椎名』だから、友哉の後ろの席だ。

あたしの、右斜め後ろの席。