「前にも言ったけど、俺めちゃくちゃ遊んでたしさ。こんな純粋そうな子、俺なんかが手え出しちゃダメだよなーとか」
「そんなこと考えてたの?」
「考えるよ、そりゃあ。そう思うとどうしても意地悪ばっかしてさ。嫌われたくねーのに、口から出てくんのは思ってることと正反対のことばっか」
まるで好きな子をいじめちゃう小学生男子だ。
悠聖がそんなこと考えてたなんて全然知らなかった。ふたりでいる時、いつだって余裕綽々だったのに。
悠聖の意外な一面を知れたことが嬉しくて、悩んでいたのが自分だけじゃなかったことが嬉しくて、ふっと笑みがこぼれた。
「お前が宗司とよく遊んでるって聞いた時も、なんであんな奴とって思ったよ。けど俺もたいして変わんねーからなにも言えなくて……あいつが女いるって教えたこと覚えてる?」
「覚えてるよ。なんで教えてくれたのって訊いても、答えくれなかった」
「あれはね、俺の卑怯な部分。人のことは言えねえし、かといって好きとも言えなかったから、これ言ったら切れるかなって思ったんだよ」
家は近所だしお互い遊び歩いていたこともあって、たまに見かけることがあったらしい。
たまたま女と手繋いで歩いてるとこ見たばっかだった、と付け足した。
「後輩売るとか最低だろ?」
「最低っていうか、意外だよ」
「そう? 俺すげえガキだよ。なにがなんでもお前のこと手に入れたかった」
たとえそれを非難する人がいても、あたしは嬉しい。
嬉しいと思うなんて、最低なのはあたしかもしれない。