「あいつのこと知ってる野郎はもちろん、変な奴らにもたまにからまれんだよ。あいつ目立つだろ?」

「……うん」

「一年の時みんなで祭り行ったんだけどさ。イベントん時ってバカが集まるんだよ。まあ俺らも同類だから、けっこう派手にやってた」

春斗が昔からよく喧嘩をしてたことは知ってる。

怪我をして帰ってくることもあったし、服に血がついてるのも見たことがある。

「俺らん中でもあいつ、ずば抜けて強いからさ。逆恨みされたりもしてて……」

言いにくそうに、遠回しに、少しずつ話していく。

「でもあいつ、お前と付き合ってから変わったんだよ。喧嘩とか一切しなくなった」

春斗がなにを言いたいのか、なんとなくわかった。

悠聖はあまり地元を歩きたがらなかった。付き合ってからの二年で行ったのなんて、近所のコンビニとレンタルDVD屋くらいだった。

なにをするにもどこへ行くにも、「ちょっと遠出しよ」って笑って、いつも必ず少し離れた地域へ行っていた。

どうして悠聖があたしを地元のお祭りに連れていってくれなかったのか。どうしてわざわざ、電車に乗ってまで別のお祭りに行ったのか。

――人が集まる場所に、行こうとしなかったのか。

「お前といる時に万が一そういう奴らに出くわして、お前のこと巻き込むのだけは嫌だってさ」

悠聖がなにを考えているかなんて、全く考えていなかった。いろんなところへ連れていってくれる悠聖に、ただただ甘えていた。

「男同士って、女みてーにいちいちそういう話しねえんだよ。実際あいつから女の話なんて聞いたことねえし。でもお前の話はよくしてた。兄貴の俺にだぞ? あいつ、いっつもお前のことばっかだったよ」