この恋が運命じゃなくても、きみじゃなきゃダメだった。



歩いて来たのか、悠聖の頭や肩にはうっすらと雪が積もっていた。

雪だるまみたいだねって笑うと、悠聖も笑って、マフラーをあたしの首にかけた。

「お前、薄着で出てくんなよ」

「大丈夫だよ、家の前だし。それより渡したいものってなに?」

悠聖は変わらない優しさと笑顔で接してくれている。

きっと、あたしがもう泣かないように。

「はい」

ポケットに手を入れてなにかを握り、その手をグーにしたままあたしに差し出す。

「え? なに?」

「手え出して」

言われたままに手を出すと、手の平にコロンとなにかが落ちた。

辺りが暗くてよく見えない。目を凝らすと、制服のボタンだった。

「ボタン? なんで?」

うちの高校はブレザーだ。ボタンと言えば学ランじゃないのかな。

「うちの学校、ブレザーだけどボタン渡す風習みたいなのあるんだよ」

悠聖には全然似合わないこの行動と発言。

そんなの興味なさそうなのに、あたしが喜ぶと思って、わざわざ来てくれたんだろうか。

「あと、これもやる。こっちは普通だろ?」

次に差し出されたのは、悠聖が今日までつけていたネクタイだった。あたしの制服のリボンと同じ、赤と白のストライプ柄のネクタイ。

「男用だからちょっとでかいっつーか長いかもだけど……まあ、もちろんつけなくてもいいんだけど」

悠聖なりに、卒業の記念になにをしようか考えてくれたのだと思った。

それがどうしようもなく愛おしくて、どうしようもなく切なくて、あたしはまた泣いてしまった。

「お前ほんとよく泣くよな」