待ちに待った新学期を迎えた。勉強はできるほうじゃないけれど、学校は好き。
「チナ! また同じクラスだよ!」
昇降口に貼り出されているクラス割を見た乃愛が、大興奮してあたしに抱きついた。綺麗に巻かれたキャラメル色の長い髪がふわりと揺れる。
「ほんと? やった! 何組?」
「四組!」
一年生の頃も(さらに言えば幼稚園で出会ってから奇跡的にずっと)同じクラスだった乃愛。
二・三年生はクラス替えがない。つまり自動的に三年間同じクラスでいられることがたった今確定したのだから、嬉しくないはずがない。
朝っぱらから乃愛と抱き合って喜びを分かち合った。一学年八クラスもあるわけだから、三年間同じクラスでいられる確率は決して高くないのだ。
と思ったら、乃愛は突然あたしから離れてすっと表情を消した。
「どうしたの?」
「あとね……友哉も一緒」
友哉とはあれから一度も話していない。
クラスが一番離れていて校舎も違うわけだから、お互いのクラスを行き来しないと本当に会う機会はなくて、たまに教室移動の時に見かけるくらいだった。
「……そっか。でも大丈夫だよ」
大丈夫って言い方もおかしいのだけど、他に言葉が見つからない。
あたしはもう一度友哉と話したかった。改めて謝ったり言い訳をしたいわけじゃない。勝手かもしれないけれど、友哉の人間性が好きだから、純粋に、また友達として仲良くなりたかった。
別れ話をした日「これからは友達」と言ってくれた友哉。今はどう思ってるんだろう。
そんな心境のまま、少しドキドキしながら教室へ向かった。