冬休み初日、少し遅れた一泊二日のクリスマス温泉旅行に行った。

電車で向かった温泉旅館は、ネットで見たよりもずっと大きくて綺麗だった。

荷物を置いて浴衣に着替える。

クリスマスプレゼントはお互いなしと約束していて、その代わりにこの旅行は大奮発だ。

といっても悠聖がほとんど出してくれたから、結局悠聖からのプレゼントになってしまうのだけど。

移動で疲れてしまったあたしたちは、ご飯までは部屋で話しながらゆっくり過ごした。

部屋で夜ご飯を食べて、次は悠聖が一番楽しみにしていたメインイベントが始まる。

「チィ」

「………」

「チィちゃん」

「………」

「こっちおいで」

旅行のメインである温泉は、悠聖の希望で客室露天風呂だった。

初めての一緒のお風呂だというのに、あたしは背中を向けて隅っこに縮こまっていた。といっても広くないから、そんなに離れられないのだけど。

窓の外にはクリスマスのイルミネーションが輝いている。お風呂に入りながら眺めたいと話して、客室露天風呂付きという大奮発をしたのだ。

「せっかく綺麗なのにもったいねーよ?」

「……わかってるけど」

「せめて背中向けんのやめてよ。チィと一緒に風呂入んの夢だったんだから」

「夢って、大げさ」

「ほんとだよ。だからおいで」

まあ外はもう暗いし、お風呂の周りにはオレンジ色の明かりがふたつあるだけだから薄暗いし、そもそもバスタオルを巻いてるからどうせ見えないんだけど。

それでもやっぱり恥ずかしいものは恥ずかしい。戸惑いながら振り向くと、悠聖は優しく微笑んであたしの腕をつかんだ。