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中学校に入ってからの楽しみは、学校帰りに寄り道ができること。小学校の周りは畑ばかりだったけれど、中学校は小学校とは逆方向で街のほうにある。
幼なじみの乃愛と一緒に、少し歩いて駅前のお店やカラオケに行ったりするのが日課になっていた。
とはいっても中学生のお小遣いじゃ頻繁には行けない。今日は公園でおしゃべりをすることになり、中学校の近くにある小さな公園に行った。
「あ、残念。先客いた」
「ええーっ」
ひと足先に、木に囲われている入り口をくぐった乃愛の後ろから公園を覗いてみると、男の子五・六人がブランコのところでたむろしていた。
遊具は少ないし他にもっと大きな公園があるから、あまり人はいないだろうと思っていたのに。
せっかく見つけた秘密基地を横取りされた気分だ。
「あ。あの子たち、うちの生徒だよ」
「ほんとだ」
あたしたちの中学の制服は近辺では珍しいグレーだから、同じ色の学ランを見てすぐに同じ学校だとわかった。
ただでさえ男の子は得意じゃないのに、彼らは制服を気崩して髪も染めていて、見るからにヤンキーだ。あたしが最も苦手とする人種。
絶対に関わりたくない。他の公園を探そうと乃愛の腕を引いた時だった。
「あーっ‼」
な、なに?
あたしたちを指さして、大きな口を開けて大きな声を上げたその男の子は、八重歯を見せてニカッと笑った。
「一年だろ? 何組? 一緒に遊ぼー!」
男の子たちの中心にいる、金髪ツンツン頭の男の子。人懐っこそうな笑顔を見せて、こっちおいでよと手招きをする。
戸惑うあたしを尻目に、まったく人見知りをしない乃愛があたしの腕をつかんで歩き出した。