「覚えてるよ。ほんとにその通りだなって思ったもん。だからもう、昔のことに嫉妬するのはやめたの。過去は変えられないし。今悠聖が好きでいてくれるのはあたしで、今一緒にいるのはあたしなんだから、それでいいんだって思うことにした」
「そっか。あんまりいい思い出じゃないと思ってたけど、そんなこともなかったな」
「うん。今となってはいい思い出」
喧嘩をした時は、悠聖に振られたらどうしよう、嫌われたらどうしようと気が気じゃなかった。
だけどそのおかげで悠聖の大切さを再認識できた。絶対に失いたくない人だと気づけた。
あれから喧嘩なんて一切していない。今となっては笑い合わないあたしたちを想像するほうが難しい。去年喧嘩したのが嘘みたいに思える。
乃愛やみんなには「ありえない」と言われるけど。あたしはもともと怒りっぽいほうだと思うけど。
悠聖が優しくて穏やかだから、あたしも自然と穏やかな気持ちでいられる。つまりは悠聖のおかげ。
「悠聖って完璧だよね」
「どこが?」
「運動神経も抜群だし」
「ああ、運動は好きだよ」
体育祭の時に初めてスポーツをする悠聖を見た。
悠聖が野球ってあまりイメージが湧かなかったけれど、ピッチャーで投げている姿はめちゃくちゃかっこよくて、野球に限らずバスケもうまくてめちゃくちゃかっこよくて、もはや悠聖以外の人たちの顔がへのへのもへじに見えた。
「背高いし」
「春斗と変わんねーだろ。俺は親がふたりともででかいからな」
「優しいし」