りんご飴をぺろぺろと頑張って舐めながら手を繋いで歩く。やっぱり食べにくい。

「そういえば後夜祭の時、悠聖がさっさと屋上行った理由わかったよ」

言うと、珍しく悠聖は「ギクッ」と効果音が出そうなくらい顔を強張らせた。

「後夜祭のラストって、三年生のために、三年分の学校祭のダイジェスト映像が流れるんだってね。元カノと写ってる映像も流れるかもって思ったんでしょ」

あたしはなにも考えていなかったのだけど、後日、乃愛たちに聞いてしまったのだ。

「あー……ははは」

「めちゃくちゃ焦ってるじゃん」

悠聖は言い訳が出てこないのか、絵に描いたように動揺している。まさか悠聖も嘘をつけないタイプだったとは。

「いやー……まあ、一年の時はけっこう騒いだしもしかしたら写るかもなーとは思ってました。チィ観たくないだろうなーと……」

「後夜祭、すごい盛り上がってたんだって。あたしも最後までいたかったなー」

「いや、うん、その……ごめん。悪かったよ」

「あたしのクラス、学年優勝だったんだよ。総合発表の時にみんなと一緒に喜びたかったのに」

「ごめんって、ほんとに」

「冗談だよ。あたしのためにしてくれたんだよね。でも、元カノの映像が流れたって別に気にしないよ」

強がりじゃなかった。観たいかと訊かれたらもちろん観たくはない。

だけど、いちいち嫉妬して怒ったりはしない。

「悠聖、覚えてる? 去年初めて喧嘩したよね」

「ああ、そういえばそうだな」

「あの時に悠聖が言ってたこと、あたしはっきり覚えてるんだ。『俺は今お前と付き合ってて、俺なりに大事にしてるつもりだよ』って」

「よく覚えてるな」