夏休みはこれでもかというほど遊び惚けた。悠聖が学生生活最後の夏休みを満喫したいと言ったからだ。
海に映画館に水族館に動物園、定番のデートスポットに行ったし、みんなでカラオケや遊園地にも行った。
絶叫マシンには一緒に乗ってくれなくて、理由を訊いたら苦手らしい。初めて聞いた弱点に思いっきりつけこむと、お化け屋敷に連れていかれて思いっきり仕返しをされた。
写真もたくさん撮った。悠聖との思い出が増えていくことが嬉しかった。
夏休みラストのイベントは、地元――ではなく、去年も一緒に来た高校の近くで開催される夏祭り。
今年も浴衣を着て、会場を歩きながらまったりと過ごす。
「チィ、りんご飴食う?」
「なんで? あたし別にりんご好きじゃないよ」
「祭りといえばりんご飴だろ」
確かにそうだけど、りんご飴ってどう食べたらいいのかわからないから好きじゃない。手も口もベタベタになりそうだし。
「悠聖が食べなよ」
「それじゃ意味ないだろ」
「なんで?」
「浴衣着てりんご飴食ってるチィ撮りたいから」
高瀬千夏取り扱い検定があるのなら、悠聖は間違いなく一級だ。
「ちっちゃいのでもいい?」
「いいよ。買いにいこう」
りんご飴を売っている出店を探してみると、りんごだけじゃなく苺やメロンやいろんなフルーツ飴が並んでいた。
メロン飴がいいと言うと「それは邪道だ」とか「でかいほうが祭りっぽいだろ」とか意味のわからないことを言われて、結局大きなりんご飴を持たされた。
小さいのでいいって言ったくせに。
悠聖の笑顔に弱いあたしは、じゃあ半分こね、と結局負けた。