うつむいたあたしの顔を覗きこんで笑う。あたしはどうも嘘をつけないらしい。
「……なんでもない」
「俺との結婚式でも想像したの?」
悠聖はどうしてこんなになんでもお見通しなんだろう。
「……ちょっとだけ」
「俺もちょっと想像したよ。本物のドレス着たチィちゃん」
誰にも言えなかったけれど、完成したドレスを初めて試着した時に一番に想像したのは、タキシードに身を包んで隣で微笑む悠聖だった。
結婚したいとか思っているわけじゃないのに。
作業中にみんなで理想の結婚について語り合ったせいだろうか。
「ほんと可愛いなあ。でもそればっかりはまだまだ叶えてやれないから、とりあえず保留な」
「保留って……いつか叶えてくれるの?」
目を合わせると、悠聖は目尻を下げて微笑んだ。
「ドレス姿見たいし。それにいつも言ってるだろ。お前のお願いくらい全部叶えてやるって」
あたしも、スーツ姿もかっこいいけれど、本物のタキシード姿を見たい。
絶対、絶対絶対絶対。世界一かっこいいに決まってる。
「真っ白のウエディングドレス着たチィに、世界一綺麗だって言うよ」
胸がいっぱいだった。幸せすぎて泣きそうになった。
後夜祭を締めくくる花火が打ち上がる。にっこり笑った悠聖は、あたしの肩に手をまわしてキスをした。
――まるで、誓いのキスみたいだった。
一瞬で消えてしまう儚い花火。
一生消えなければいいのに。
ずっとずっと、輝きを失わなければいいのに。
花火を見上げる悠聖の綺麗な横顔を、ずっと、ずっと見ていた。