「それにずっと思ってたんだけど、チナちょっと地味じゃない? せっかく顔可愛いのにもったいないよ」

「地味って。失礼でしょ」

「髪染めてメイク練習して可愛くなって、イケメンの彼氏つくろう!」

張り切る乃愛にのせられて、あたしはされるがまま。椅子に座らされて、ビニールの手袋をした乃愛に髪をいじられる。ブリーチ剤を髪につけられた瞬間のひんやりとした感触が、妙にくすぐったかった。

乃愛ほど長くはないけれど、胸くらいまで伸びた、少し重たい印象の黒髪。メイクなんてしたことのない幼い顔。

中一なんだからそれが当たり前なのだけど、あたしの周りはたぶん、乃愛を筆頭に大人っぽいのだと思う。髪を染めているのも乃愛だけじゃない。ただでさえ好奇心旺盛な年頃のあたしは、変わることになんの抵抗もなかった。

乃愛が放置時間を間違えて金色になってしまった髪は、さすがに恥ずかしいし学校に行けないから、冬休みが終わる前にまた染め直した。密かに憧れていた、乃愛と同じキャラメル色。

メイクも教えてもらった。さらさらストレートの乃愛と違ってあたしの髪はくるくるの天パだから、ポニーテールやおだんごを練習した。

友哉と別れて一ヶ月も経たないうちに、あたしは自分でも驚くほど別人になっていた。