遠い目をしたまま、へなへなと椅子に座った。
自慢の彼氏を褒められて素直に嬉しい。「かっこいいでしょ」って笑いながら、あたしも席に座った。
「さっき男の人たちがいた時、チナが嫌そうな顔してた理由がわかったよ。あんな素敵な彼氏がいるんだね」
梓が柔らかく笑う。素敵な彼氏と言われたことが嬉しくて、あたしも満足気に微笑んでみせた。
乃愛と瑞穂はすっかり気が合ったらしく、一日でずいぶんと仲良くなったみたいだ。あたしも瑞穂の気さくさと梓のふんわりとした雰囲気が好きだと思った。
放課後、瑞穂と梓は部活の見学に、乃愛は書類を提出しに職員室へ行った。部活をする気もなく書類も昨日提出した暇なあたしは、教室で悠聖を待っていた。
今日は念願の〝一緒に下校〟を実現する予定なのだ。
大親友のふたりと同じクラスになれて、新しい友達もできて、出だしはこの上なく好調だった。
……のだけど。
「チナちゃん?」
誰もいなくなった教室であたしを呼んだのは――声の主はすぐにわかった。
この声はよく覚えている。心臓が、ドキリと大きく跳ねた。
「……宗司くん」
――どうして宗司くんがいるの? 宗司くん、この高校だったの?
宗司くんは後方のドアから教室に入り、あたしの前に立った。
「やっぱりチナちゃんだ。久しぶり」
変わらないにこにこ。とっさに目をそらす。
「五組にめちゃくちゃ可愛いふたり組がいるって噂で聞いてさ。もしかしたら、チナちゃんと乃愛ちゃんかなって思ってたんだ。会えて嬉しいよ」