ドアのほうを見ても、さっきまで騒いでいた男の人たちの姿がなくなっている。
なにかを察したらしい乃愛が、「ああ」と言いながら食べ終えたパンの袋を丸めた。あたしはなにがなんだかわからないし、ちょっと怖い。
なんであたしだけ?
「チナ行ってきなよ」
「え?」
「呼ばれたんだから行かなきゃ」
「そ、そうなの?」
まだ残っているお弁当箱に少しの未練を持ちながら、恐る恐るドアのほうへ歩いていった。
そろりと廊下を覗くと、
「悠聖!」
壁に寄りかかっている悠聖が立っていた。
「よ」
「来てくれたの⁉ 放課後まで会えないと思ってた」
「はは、サプライズだよ」
よくよく考えてみれば、あたしを名指しで呼ぶ人なんて悠聖くらいしかいない。
気づかなかったのには理由がある。
「あれ? 男の人たちいなかった?」
「やっぱあいつらチィと乃愛ちゃん目当てか。どっか行ったよ」
「え? 悠聖が来たから逃げたってこと?」
「ちげーよ。可愛い彼女に用事あるっつったら譲ってくれただけ。先輩を敬って、いい奴らだな」
悠聖は大きな口を開けて笑った。
この笑顔からは想像つかないけど……いや、深く考えるのはやめよう。あまり穏やかな話ではない気がする……。
悠聖と話し終えて教室に戻ると、
「ちょっとチナ! あの人誰⁉」
瑞穂はすごい形相であたしの両肩をつかんだ。
「あの人って……」
「今の背高い人! 仲良さそうに話してた人だよ!」
「悠聖? あたしの彼氏だけど……」
瑞穂はあたしの肩をつかんだまま、次はあさっての方向に目をやった。
「なに? 悠聖がどうかしたの?」
「……めちゃくちゃかっこいいじゃん。羨ましすぎる……」


