小学校よりも中学校のほうが少し遠くて、最初の頃は早起きが辛かったことを覚えてる。高校はもっと遠くて電車通学になるから、もっと早起きしなければならない。

それだけが憂鬱だけど、念願の、悠聖と同じ高校。一緒に勉強を頑張った乃愛と友哉と同じ高校。

私立校への進学を許してくれたお父さんとお母さんのためにも、合格を誰よりも喜んでくれた悠聖のためにも、なにがあっても絶対に頑張って卒業して、短大に進学して夢を叶えると決めていた。

中学校の頃より少し濃くなったメイク。相変わらずの天パだけれど、それなりに扱い慣れた、キャラメル色の長い髪。

タータンチェックのプリーツスカート。胸元には、可愛いと評判の赤と白のストライプ柄の大きなリボンが飾られている。

「チナ、おはよう!」

入学式は一緒に行こうと約束していた乃愛が、キャラメル色の巻き髪を弾ませながらあたしに向かって大きく手を振った。

あたしと同じ真新しい制服に身を包んでいるのに、まるで前から着ていたみたいだ。綺麗な乃愛には、セーラー服よりブレザーのほうがよく似合う。

正門を抜けて、緑に囲まれたアスファルトの道を歩く。その先にある昇降口付近は、同じく今日からこの高校の生徒になる子たちで溢れ返っていた。

「チナ! 乃愛!」

人だかりの中から抜けてあたしたちを呼んだのは友哉だ。同じく真新しい制服に身を包んで……すでに着崩している。

初日くらいネクタイちゃんと締めなよ、と注意しようと思ったけれど、友哉が寝坊せずに来たことだけでも褒めるべきだと気づいてやめた。

「おはよ」

「おう。俺ら三人とも同じクラスだった!」

「ほんと⁉ やったー! 奇跡じゃん! ね、チナ!」

喜ぶふたりに手を取られ、あたしも「うん!」と大きく頷いた。このふたりがいるなら、とりあえず一年間は安心だ。

新学期はいつも緊張してしまう。