「……どういうこと?」
「なんていうか、すげえ簡潔にまとめると、素直でいい子なんだよな。ずっとにこにこしてるし、ありがとうとかごめんなさいとかもちゃんと言うじゃん。ただ言葉にしてるだけじゃなくて、本気で言ってるんだよな。そういうのって簡単にできねーし、ちゃんとできる子ってそんなにいないと思うよ」
あたしが素直に言えるのは悠聖のおかげだ。いつも優しくしてくれるから、自然と「ありがとう」が出てくるだけなのに。
そう言おうと口を開きかけたところで、悠聖が続けたからまた黙った。
もっともっと、聞きたいと思った。
「すげえ大事に育てられたんだろうなって思うよ。親も春斗も優しいよな。いい家族だなー、だからこいつこんないい子なんだろうなーって、いつも思ってた」
そんな風に言われたのは初めてだった。家族は優しいし、大事にしてくれてることはちゃんとわかってる。
あたしだけじゃなく家族まで褒めてくれたことが、すごく嬉しい。
悠聖はいつもそうだ。いつもあたしを安心させてくれる。
「それ、あたしもずっと思ってたよ」
「なに?」
「悠聖の家族はみんないい人だなー、だから悠聖こんなに優しいんだなーって」
「うちは普通だよ。特別仲良くもなければ悪くもない。それに俺、チィが思ってるほど優しくねえよ」
「優しいよ?」
「お前がいい子だから優しくなれんの。お前といたら、俺すげーいい奴になれんじゃねえかなって思ったんだよ」
あたしだって悠聖が思ってるほどいい子じゃないのに。
もう一度「チィのおかげだよ」って笑いながら、あたしをぎゅっと抱きしめた。
甘い香水の香りに包まれる。