卒業式から一週間が過ぎた、あたしの誕生日である今日、初めて悠聖の家にお泊まりをする。
泊まりたいとずっと言っていたのだけど、高校に受かったらな、とおあずけをくらっていたのだ。
念願の初めてのお泊まりに、あたしは絶頂に浮かれていた。
「悠聖、なんであたしのこと好きでいてくれるの?」
ソファーに座っている悠聖にぴったりくっついて、お風呂上がりの悠聖を見上げる。
「え? なんで?」
「たまにはいいじゃん。誕生日だし、プレゼントに教えてよ」
悠聖は「可愛い」とか「好き」とかたくさん言ってくれるけど、どこが好きとか訊くといつもはぐらかされてしまうのだ。
今日は「誕生日」という最強の武器を持っているから、悠聖はきっと答えてくれる。
思惑通り、悠聖はいつもみたいにはぐらかすことなく、眉間にしわを寄せて目線を四方八方に動かした。
「え……そんなに考えなきゃ出てこないの?」
「え、いや、あー……なんだろ。初めて会うタイプ……だったから?」
「……なにそれ?」
あたしのドキドキを返してほしい。全然求めていた答えじゃない。
不満が思いきり顔に出ていたらしく、悠聖は「ちょ、待って、」と少し慌ててまた考え始めた。
「あー……ちょっと、昔の話してもいい? 気分悪くなるかもしんねえけど」
昔の話、ってなんだろう。
あたしの知らない悠聖を全部知りたい。その気持ちは変わらない。だから、昔の話を聞いて落ち込んだりしない。
戸惑いながら小さく頷いたあたしを見て、悠聖の口がゆっくりと開いた。
「俺ね、昔すげえ遊んでた」
「そうなの?」