「だからさ。俺なんか絶対、悠聖くんには敵わねーなと思った」

ふと、悠聖と付き合う前のことを思い出した。

――あいつさ。……いや、ごめん。なんでもない。

そうだ。

あの時――友哉は元彼であることを当てられて、彼女はいるのかと聞かれて、そのあとなにか言いかけてた。

もしかしたら、これを言おうとしたのかもしれない。

――あいつ、お前のこと好きだろ。

そっか。悠聖はどこまでもお見通しだったんだ。

「悠聖くんと付き合ってからのチナ見てたら、すげー幸せそうでさ。それを見てるだけで俺も嬉しかった」

「……友哉」

「だから……だんだん、また付き合いたいとかじゃなくて、もうチナが笑ってくれてたらいいやって思うようになってたんだ。今は、とにかく幸せになってほしいって思ってるよ」

あたし今まで、友哉になにができただろう。

付き合ってる時も、別れた時も、同じクラスになって友達として仲良くなってからも。

友哉にはもらうばかりで、あたしはなにもできてない。

だからせめて、

「チナ、幸せになって。もちろん悠聖くんと」

「うん。約束する」

この約束は、必ず守るから。

友哉は、別れた日と同じ優しい笑顔で、あたしの頭をそっと撫でた。