「プリザーブドフラワーっていうんだって。可愛いよな。見つけた時これにしようってソッコー決めたもん」
「嬉しい。ありがとう、友哉」
「どういたしまして。……で、もうひとつ、言いたいことあって」
「え? なに?」
花に見とれているあたしに友哉は続けた。
少し迷っているように見えたその目は、視線が合うと真剣なものに変わる。
真っ直ぐあたしを見た友哉は、小さく微笑んだ。
「俺、今でもチナが好きだよ」
一瞬、なにを言われたのかわからなかった。
好き?
友哉が、あたしを?
「やっぱ気づいてなかったよな。お前ほんと鈍感」
あたしはみんなに思われてるほど鈍感じゃない。
気づいてないふりをしているだけで、本当はいつもどこか感づいてはいる。
「別れてからもずっと、チナが好きだった。俺の中学三年間、全部チナだったよ」
でも、友哉の気持ちには全く気づかなかった。
もう本当に友達だと思ってた。
「……友哉」
なんて言ったらいいのかわからない。
言葉がうまく出てこない。
気づかなくてごめん、とか、そんな言葉は違う気がした。
「別れた時に決めたんだ。これからは友達としてチナのこと見守ろうって。けどもし、どうしても忘れられなかったら……卒業式の日に気持ちだけ伝えようって決めてた」
そう言った友哉は、さっきとは違う、どこかすっきりしたように無邪気に笑った。
別れてから二年間、友哉はいったいどんな気持ちで過ごしてきたんだろう。
どんな気持ちであたしを見てくれてたんだろう。
あたしが椎名を好きだと言った時、椎名と付き合った時、友哉はもしかしたら辛かったかもしれない。