『中庭でさぼってたら見つかるだろ。屋上だよ』

「え、屋上入れるんだね」

あたしの中学の屋上は立入禁止だから憧れる。

『普段は鍵かかってるよ。裏ワザ』

「……なにしたの?」

『内緒』

小心者のあたしは、立入禁止の屋上で授業をさぼるなんて絶対に無理だ。

ダメじゃんって言ってもどうせ「大丈夫だよ」とか言われるだろうから、見つからないように気を付けてね、とだけ言った。

「屋上、よく行くの?」

『しょっちゅう来てるよ。誰も来ねーし、天気いい日はめちゃくちゃ気持ちよくて、すげえすっきりした気分になる』

「そうなんだ」

屋上にひとりで寝転がって、涼しい風に吹かれながら青空を見上げる。確かにすごく気持ちいいと思う。想像したら、見てみたくなった。

「……あたし、進路決めた。たった今」

『え?』

悠聖と同時に、乃愛と友哉も「え?」とこっちを向いた。

驚くに決まってる。つい数分前まで、どうしようどうしようって話していたのに。

「あたし、やっぱり悠聖と同じ高校行きたい」

小心者のあたしには、禁止されている屋上に忍び込むことも、ましてや授業をさぼることもできそうにないけれど、悠聖が見ているその景色をあたしも見てみたいと思った。

動機は不純。でも今までで一番しっくりきた。

『受かったら屋上の入り方教えてやるよ』

悠聖が過ごした高校生活。悠聖が見てきた景色を、あたしも見たい。

もし受かっても一年経てば悠聖は卒業しちゃうけれど、一緒にはいられなくても、あたしも同じ高校で過ごしてみたい。