「あたしもそうしよっかなあ。チナこそ悠聖くんと同じ高校行かないの?」
「んー、もちろんそれも考えてはいるんだけど」
乃愛も受験するのなら、あたしが決めさえすればまた三人一緒にいられるかもしれない。
だけど私立だし電車通学になるし、本当にいいんだろうか。もっと近くに公立校もあるのに。行きたいという気持ちはあるのだけど、あと一歩のところで決め手に欠ける。
もうすぐ願書も提出しなければいけないし、いい加減、本格的に志望校を決めなきゃいけないというのに。
「……みんなどうやって高校決めるんだろう」
「成績とかじゃないの? ていうかチナ、昔から幼稚園の先生になりたいって言ってたじゃん。付属の短大で資格取れなかったっけ?」
そう、あたしにも一応将来の夢がある。子供が大好きだから、幼稚園の先生に限らず、とにかく子供と関われる仕事をしたいという漠然とした夢なのだけど。
乃愛の言う通り、付属の短大には幼児教育学科があるから、本気で幼稚園教諭を目指すならこの上ない進路だ。
「あ。悠聖」
テーブルの上でスマホが震えた。今は学校にいるはずの悠聖からだ。
「もしもし?」
『おー、なにしてんの?』
「乃愛の家にいるよ。友哉も一緒。悠聖は学校じゃないの?」
『今さぼり中。いいなあ、開校記念日』
「さぼっちゃダメじゃん」
たまにはいーの、と笑う。よくないと思うんだけどな。
だけど悠聖の笑顔を浮かべると、あたしはどうも弱い。
「悠聖、今外にいる?」
『そうだよ』
電話越しに風の音が聞こえる。今時期は涼しいから、外にいるほうが気持ちいい。
「どこにいるの? 中庭とか?」