この恋が運命じゃなくても、きみじゃなきゃダメだった。



足を止めて、あたしのコサージュに触れる。

悠聖が触れてくれたことが嬉しくて、人混みの中だというのに、あたしの涙腺は耐えてくれない。

「なに泣いてんだよ」

「だって……怒ったとこ初めて見たし、もう嫌われたかと思った……」

「アホか。俺がお前のこと嫌いになるわけねーだろ。それだけはありえない」

「連絡もこないし……」

「ああ、それはな。頭冷やしてから、どうやって仲直りしようか考えてた。つーか連絡しねえのはお互い様だろ」

悠聖の言う通りだ。弱虫なあたしが悪い。

「わがまま言って、ごめんなさい……」

「いいよ。俺も言い過ぎたし。ほんとごめんな」

悠聖は悪くないのに。謝る必要なんかないのに。この人はどこまで優しいんだろう。

嫌いになんかなるわけないって、ありえないって言ってくれたことが嬉しくて、こぼれた涙は一向に止まる気配がない。

「……正直、俺もちょっと怖かったよ。お前が別れるって言い出すんじゃねーかと思って」

「それだけは絶対にないよ。ありえない」

「はは。だよな。お前俺のこと大好きだもんな」

公衆の面前で大泣きして、みんなにじろじろ見られているかもしれない。悠聖に恥ずかしい思いをさせているかもしれない。

それなのに悠聖は、泣きじゃくるあたしから目を離すことなく、微笑みながらあたしの頭を撫でる。

「チィ、浴衣似合うな。めちゃくちゃ可愛いよ」

泣きやまないあたしの涙を、長い人差し指でそっと拭って、人前じゃなかったらよかったのにって、いたずらに笑った。

もう見られないかもしれないと思っていた、悠聖の笑顔。もう触れられないかもしれないと思っていた、悠聖の大きな手。

そのすべてが、どうしようもなく、愛しかった。