もしかして、夏祭りに連れていってくれるんだろうか。そう思ったけど、少し前を歩いている悠聖はお祭り会場を過ぎて駅に向かった。
わけがわからないまま悠聖について電車に乗る。
行き先を訊くこともできず、それどころかうまく話すこともできずに、少し気まずい空気のまま。謝らなきゃいけないのに、悠聖がなにを考えているかばかり気になって謝れずにいた。
ここ、と言われたのは、悠聖の通っている高校の最寄り駅だった。腕を引かれて電車をおりる。
駅から出てしばらく歩くと、次第に看板が見えてくる。看板には、『駐車場はこちら』とか『会場はこちら』とか、そんな看板がずらりと並べられていて、人の数もどんどん増えていく。
「……悠聖?」
「祭り、行きたがってたろ?」
目を合わせてにっこりと微笑んだ。
「え……でも、バイトは?」
「ほんとは昼からだったんだけど、朝から行ってソッコーで終わらせてきた」
悠聖、早起き苦手なのに。あんなに怒っていたのに。
あたし、あんなにわがまま言ったのに。
「行こう」
差し出された左手に右手を重ねる。もう一度にっこり笑ってあたしの手を引いた。
「地元よりこっちのほうが有名だろ。連れてきたかったんだ」
地元のお祭りと比べ物にならないほどの人混み。そういえば、同じ時期にすごく大きなお祭りがあると聞いたことがある。ここだったんだ。
「浴衣姿も見たかったし。言ってなかったから諦めてたけど、着てくれててよかった」
驚いたまま黙っているあたしに気づいた悠聖は、「来たくなかった?」と首をかしげた。
「ううん。嬉しいけど……悠聖、怒ってるんじゃないの?」
「ああ……こないだ言い過ぎた。ごめんな」


