悠聖がこんなことを言うのは珍しかった。いつもなら、じゃあしょうがないな、また明日なって言うのに。
そんなに大事な話なんだろうか。
悠聖の怒った顔が、頭に浮かぶ。
涙ぐむ目でちらりと乃愛を見ると、乃愛は急いでスマホを操作して画面をあたしに向けた。
【あたしのことはいいから会ってきな!】
「あ、乃愛はいいって言ってる」
『よかった。じゃあ乃愛ちゃんちまで迎え行く。実はもう向かってるんだよ。すぐ着くから待ってて』
そう言って切れた電話。スマホを持ったまま呆然とするあたしに、乃愛は急いでベッドからおりてあたしの隣に座る。
「悠聖くん、なんだって? 会おうって?」
「あ、うん……今日は借りていい? って言ってた」
「いいに決まってるじゃん! 行きなよ!」
「あ、でも、お祭り……」
「そんなのいいから! 友哉たちでも誘って行くし。チナは悠聖くんと会って、ちゃんと仲直りしてきなよ!」
大きな目を細めてにっこり笑う。
あたし、乃愛がそばにいなかったら、怖くて会えなかったかもしれない。
謝ることを約束して待っていると、悠聖は本当にすぐに来た。
乃愛に背中を押されて、緊張しながら外へ出る。自転車かと思っていたのに徒歩だった。
「おお、浴衣だ。もしかして、乃愛ちゃんと祭り行く予定だった?」
「あ、うん……」
「マジかよ。乃愛ちゃん大丈夫?」
「友哉たち誘って行くって言ってた」
「そっか。申し訳ないけど、浴衣着てくれててよかった。ちょうどいいや」
笑いながら歩き始める。
浴衣でよかったって? ちょうどいいって?


