この恋が運命じゃなくても、きみじゃなきゃダメだった。



予定よりも早く準備が終わってしまったあたしたちは、時間がくるまでそのまま部屋で過ごしていた。きつく締められた帯に、余計に胸が苦しくなる。

「ねえ、チナ。せっかく浴衣着たんだからさ、やっぱり悠聖くんに連絡してみたら?」

「……悠聖に?」

「やっぱり見てほしいじゃん。悠聖くん、きっと可愛いって言ってくれるよ?」

あたしと同じ髪型をした乃愛がにっこりと笑う。

「……でも、乃愛と行くし。それに悠聖、きっと怒ってるよ。許してくれないかもしれない」

「そんなことないよ。ちゃんと謝れば、悠聖くんきっと許してくれるから。このまま別れてもいいの?」

このまま別れる? 悠聖と?

そんなの考えるまでもない。答えはひとつしかない。

「そんなの――」

絶対嫌だ。

言いかけた時、あたしのスマホが音を立てて震えた。

「ちょ、チナ! 悠聖くんじゃん! 早く出なよ!」

画面に表示されている名前を見て乃愛が言う。

スマホを持つなり、大きく鳴る鼓動をおさえながら、深呼吸をして通話に切り替えた。

『もしもし? チィ?』

四日ぶりの悠聖の声は、記憶に新しい低い声じゃなく、聞き慣れた優しい声だった。

それが嬉しくて、目頭が熱くなる。

『あれ? もしもし?』

「……悠聖」

やっと出たのはかすれた声だった。

まだ怒っているだろうか。この電話の内容は別れ話じゃないだろうか。そんな不安が押し寄せる。

『今日さ、空いてる? 会えない?』

なにを言われるんだろう。

「……あ、えっと、今、乃愛の家にいて……」

『そっか。でもごめん。乃愛ちゃんには申し訳ないけど、今日は借りていい? って訊いて』