教室の前に着いても、中を覗くのが怖くて、なによりも友哉に会うのが怖くて、あたしはうつむいたまま。
だけどもう、逃げちゃダメだ。
深呼吸を繰り返してゆっくりとドアを開けると、カラカラと小さな音が廊下に響いた。
まるであたしの意気地の無さを表しているみたいな音だと思った。
「チナ?」
懐かしささえ感じる声が、誰もいない静かな教室に小さく響いた。
「なんか久しぶりだよな。どれくらいしゃべってなかったっけ?」
一歩だけ足を前に出して、ドアを閉めた。
ちゃんとしなければと思っているのに、また足が床に張り付いたみたいにそれ以上動けない。
友哉が座っているのは窓側の席。じゅうぶん離れているのにこれ以上近づくのが怖くて、あたしはうつむいたまま立ち尽くしていた。
「来てくれると思わなかった。ありがとな」
――ありがとう? どうして?
弾かれたように顔を上げると、友哉は変わらない笑顔をあたしに向けていた。
「……なん、で?」
一ヶ月以上ずっと避けて、ちゃんと話そうともしないで逃げていた。そんなあたしに、どうして「ありがとう」なんて言えるの?
どうして笑ってくれるの?
「俺、チナのこと大好きだよ。だからちゃんと言ってほしい。避けられんのは正直きついからさ」
友哉がゆっくりと立ち上がる。徐々にあたしとの距離を縮める。
その笑顔に、涙が溢れた。


