映画を何本か借りて、コンビニでお菓子とココアとコーラを買って悠聖の家へ行く。

「どれから観る?」

「なんでもいいよ」

袋からDVDを取り出してテーブルに並べる悠聖に、ストローでココアを飲みながら、目も合わさずに答えた。

「チィ?」

ヤバイ。今のは確実に感じが悪かった。

いつもなら、どれにしようねって一緒に選ぶのに。それに自然と少し声も低くなってしまった。

そんなあたしに悠聖が気づかないはずもなく、手に持っていたDVDをテーブルに置いて、あたしのほうをじっと見る。

「チィ、なんか怒ってんだろ」

「……怒ってないよ」

怒っているわけじゃない。それなのに、どうして笑えないんだろう。

「正直に言えよ」

理由はわかってる。でもすごく言いにくい。

「なんでもない」

「なんでもなくねーだろ。……ユカ?」

わかってるんじゃん。

勝手にふてくされているのは自分なのに、わかってるなら訊かないでよって心の中で八つ当たりした。

ていうか「ユカ」って。そんな平然と、あたしの前で女の人の名前を呼ばないでほしい。

だって、あの人、たぶん。

「……あの人、元カノ?」

学校祭に遊びに行った時、悠聖の女友達にはたくさん会った。だけどその人たちとは明らかに雰囲気が違っていた。

他の女の人たちよりも、ずっと、距離が近かった。

「あー……まあ、そうだけど」

自分で訊いたのにショックを受けた。

元カノに話しかけられて、あたしを放ってその人のところへ行ったこと。楽しそうに話していたこと。

忘年会とか言ってたし、定期的に遊んでるのかな、とか。家も近いって言ってたな、とか。

「でも付き合ってたのなんか中学の時だし、今は普通に友達だよ」

「前に言ってた、初めて付き合った人?」

「……お前けっこう鋭いな」