「来年チィがうちの高校入ったら出れるよ」

「だから出たくないってば。……悠聖、出たいの?」

「公開イチャイチャもいいじゃん」

「嫌だよ。ただでさえ目立つの恥ずかしいのに、みんなの前でチューするなんて」

めでたく優勝したカップルは、『キース!』コールで堂々とキスをしていた。

あたしはあんなの絶対に無理。

「さっきみんなに見られたじゃん」

……そういえばそうだった。

「あれは事故でしょ」

「でもまあ、チィがここ入ったら楽しそうだよな」

大歓声と共に打ち上げられた花火が夜空をカラフルに染める。

「来てほしい?」

見上げた悠聖の顔が花火に照らされる。

かっこいいなあ。

「そりゃあな」

もう七月だというのに、あたしは未だに志望校を決め兼ねていた。

もちろん悠聖と同じ高校って考えたこともある。

だけど近辺には他にいくつも高校があるし、電車通学は面倒だな、とか、春斗に続いてあたしまで私立に入っていいのかな、とか、なかなか決心がつかずにいた。

「学校でイチャイチャできるだろ。男の夢だよ」

「バカ。なんでそういうことばっかり考えるの?」

「好きだからに決まってんだろ。ずっと触ってたいんだよ」

あたしを見て、穏やかに微笑んだ。

手を繋ぎたい、抱きつきたい、キスがしたい。

悠聖も、あたしと同じ気持ちでいてくれているんだろうか。

「好きだよ、チィちゃん」

みんなの前でキスなんてできないと、ついさっき言ったばかりなのに――

全校生徒が集っているグラウンドで、悠聖の笑顔に負けたあたしは、静かに目を閉じた。