「悠聖も子供だったんだね」
「なにが?」
学校から追い出されることはなく、「校内では手繋ぐまでにしとけ」と注意を受けてすぐに解放された。
悠聖が校内を案内してくれると言うから、注意を守って手を繋ぎながらふたりでぶらぶらと歩く。
「さっき先生に怒られてるとこ見たら、初めて悠聖が子供に見えた」
「あいつには敵わねえんだよ」
クスクス笑うあたしを見て、「笑いすぎだよ」と呆れる。
だって面白いんだもん。
「ねえ、春斗はバンドやるんでしょ? 悠聖はなんかやらないの?」
「しないよ。俺は裏方」
「バンドやってるとことか見てみたかった」
「楽器弾けねーもん」
「ボーカルは?」
「歌も別にうまくねーからなあ」
春斗も別にうまくないんだけど。
あたしが知らないうちに上達したんだろうか。
「悠聖の歌聴いてみたい」
「だからうまくねえって」
「いいの! 聴きたい」
「じゃあ今度カラオケ行く?」
「うん!」
校内を一周した頃、ちょうどバンドが始まる時間だと言われて体育館に向かった。後夜祭が始まるのもあって、中はすでに超満員だった。
ステージには春斗たちが立っている。なんか挨拶をして盛り上がってるけど、妹としては調子にのってMCを務めるお兄ちゃんを見るのは恥ずかしい限りだ。
演奏が始まって春斗がマイクを握った。
うん、やっぱり別にうまくはない。
バンドの次は『ベストカップル』だった。派手な人たちが手を繋いでステージに上って、それぞれPRをしていく。
優勝を決めるのは、みんなの声援が一番多かったカップルという、なんとも適当なもの。
あたしたちは特に盛り上がりもせず、後ろに座って眺めていただけ。
「チィ、出たかった?」
フィナーレはグラウンドで行われる花火大会。
すっかり暗くなった空の下で、さっきのベストカップルの余韻が残っているのか、みんなは堂々とイチャイチャしていた。
「そんなわけないでしょ」